かるたはウインタースポーツ?

今年の名人戦解説時、司会の名倉さんと名人戦に向けての調整について話をした際、「ウインタースポーツですね」とコメントいただきました。今回は私の調整方法をご紹介します。

 

■大学時代

早稲田大学かるた会は週4日(最大12本)の練習が可能でした。さすがに毎週12本練習することはありませんでしたが、オールシーズンできる恵まれた環境であったと思います。予選を勝ち抜き挑戦者決定戦にも勝利した後、OBの先輩に連れられてお世話になったのは東京東会、横浜隼会でした。東会では現会長で永世名人の松川さん、隼会では永世クイーンの渡辺令恵さん(現在は鎌倉山かるた会)に稽古をつけていただきました。大晦日と元日はさすがに休みでしたがクリスマスも練習したのを覚えています。名人になった後も普段の練習に加えて、追い込み練習のような形で松川さん、令恵さんには大変お世話になり厳しい練習ができました。早稲田の中で一番練習相手になってもらったのは蝉丸こと同期の高洲くん、後輩の富田くんだと思います。

 

■社会人になって

ここからウインタースポーツになります。名人戦が終わるとオフシーズンとなり、予選の始まる10月頃から練習を再開。まずはダイエットから始めるという感じでした。配属先が愛媛県であり普段から練習ができなかったこと、ビール好きでビール会社に入社したこともあって太ってしまうことが主な言い訳です。10月後半から週末には東京へ出かけて練習する、年末年始で集中練習するという調整になりました。その5年後に東京へ転勤しましたが結局この調整スタイルは変わらず、早稲田の練習に顔を出すのは予選のタイミング以降で練習数は多くても年間50試合程でした。しかも毎年調整のスタート時期が遅くなり、最後の方は挑戦者が決まる11月中旬になり、試合数にすると30試合程になってしまいました。実力を上げるというより正直戻すことさえも難しい状況でした。試合以外では自分の名人戦の映像をみてイメージトレーニングをしていました。調子の良い時の取り方を思い出すのに最適でした。

 

さて、このような調整でなんとか防衛し続けることができたのは大きく2つの理由があると思っています。まずひとつには高校時代の経験です。年に1回高校選手権(個人戦)に出場して優勝するという目標に向けて、夏休みに短期集中練習するという環境だったことが大きく影響しています。この時は完全にサマースポーツでしたが、短期集中型で結果を残してきた経験があったからです。もうひとつは、限られた試合数、追い込まれた環境下で中身の濃い練習をして、これ以上は練習しない、これで負けたらそれまでだと割り切っていたことだと思います。もちろんそれでも勝つ、以前書いたように「マシンが違う」と自分に言い聞かせて本気で取り組んでいました。

 

調整方法は人それぞれと思いますが、成長途上の方は練習量が何よりも大切でまずは実力を上げる必要があります。今はコロナ禍で難しいかもしれませんが、大会で勝つ、昇級するなどの分かりやすい目標があると良いですね。大会でなくても一緒に練習している●●ちゃんに勝つ!みたいな目標でも良いと思います。その目標に向かってどんな練習をどのくらいするのか、それを自分で考えて、決めて、実行することが成長につながるのだと思います。これはかるただけでなく他のスポーツでも、学校の勉強でも同じことだと思います。練習や大会が限られる今、自分なりの方法を見つけてみてはいかがでしょうか? 春以降はきっと大会も少しずつ再開されると思いますので、大幅にレベルアップした姿を見せるチャンスでもあります。今はガマンしながらもできることを考えてやっていけると良いですね。

 

以下おまけです。

■名人を辞退した後

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2013年名人位を返上した時

この後、数年間お休みしたのでウインタースポーツでもなくなっちゃいました。年間ゼロ試合の年もありました。完全休業状態だと取りたくなるのかな?と思いましたが全くそんなことはありませんでした。

 

■現在

人数が奇数になるとたまに小中学生と練習します。2020年は40試合も取りました。対戦していると子どもたちが強くなっていく様子が分かって、今はそれが楽しみでもあります。今後も大会に出ることはなさそうですが、もしかしたらそのうち真剣に取らなければならないような出番がくるかも?しれないので、それなりに準備をしておこうと思います。