家でもできる練習(構え編 左手)

人がやっていない今だからこそ自宅で練習してレベルアップするチャンスです。この機会に普段おろそかにしがちな暗記、構え、払いなどの練習をやってみてはいかがでしょうか。毎日10分でも継続すればものすごく力がつくはずです。

「暗記編」「払い編」に続いて「構え編」です。無理なく速く取るためには、体をスムースに動かすことのできる安定した構えが大切です。なお、体の大きさや柔軟性は人それぞれですので、構えも人それぞれ、あくまでも私の考えです。

初回は「左手(利き手と反対側の手という意味)」です。体を支えることはもちろん、うまく使うことでスピードを上げることができます。

まずは手の向き。みなさんは①と②のどちらに近いでしょうか?

f:id:saigo3150:20200419184343j:plain

①札に対して指先が横を向いている

f:id:saigo3150:20200419184355j:plain

②札に対して指先が上を向いている

最近は②「札に対して指先が上を向いている」選手が多いように感じています。私は競技かるたの基本の構えは、陸上短距離のクラウチングスタートや相撲の立ち合いが一番近いと思っています。足と手で体を支え、一気に前に出やすいように腰を持ち上げた前傾の構えだからです。もちろん競技かるたの場合は膝をつきますし、利き手に体重をかけると遅くなります。前だけでなく斜めにも横にも出なければなりませんから、それらの構えから変形が必要になります。

さて、クラウチングスタートにおいて、下の写真のように両手の指先を前にする選手を見たことがあるでしょうか。

f:id:saigo3150:20200419184732j:plain

 私はこのように構える陸上選手を見たことがありません。これだと前にでることを手首の関節が邪魔をします。一般的に手首の可動域は、手の甲側には80度しか傾かないそうで、札に対して指先が上を向いた状態では、構えた時点から体が前に行くことを妨げてしまっています。特に敵陣右下段を取る時に影響が出ます。前に行くためには邪魔な左手を畳からすぐに離すとか、体全体ではなく右手だけで取るなど、左手が使えず決してスムースで速い動きには繋がりません。これは左肘の関節でも同じことが言えます。

次に、左手の位置。みなさんは①と②のどちらに近いでしょうか?

f:id:saigo3150:20200419184409j:plain

①競技線より内側

f:id:saigo3150:20200419184355j:plain

②競技線と同じくらい

①のように競技線よりかなり内側に構えている場合、左手より外側(競技線側)にある札には、左手が邪魔をしてスムースに届きません。指先が上を向いているとなおさらです。敵陣右下段は突き手、自陣左は押さえ手になる人が多い一つの理由だと考えます。左手は膝と同じで体をしっかり支え、イメージとしてはコンパス(右手が鉛筆、左手が針)の支点のように使うことです。半径が小さければ小さな円しか描けませんので外側は届かない。競技線と同じくらいの位置に構え、大きく円は描ける状態で構え、大きく円を描かずにコンパクトに取ることが大切です。

 

【さらなる上達のために】

左手は体を支え、畳につけた状態で重心をコントロールをする大切な役割があります。ですから、すぐに畳から離すとか、前に行けない無理な状態で構えて取るのは得策ではありません。競技かるたは音を聞き分けて速くとる競技ですから、どこで音を聞き分けるかがポイントです。その時にどこに重心があるかによって、速く動ける動けない、次の動作に移れる移れない、これが決まります。重心については次回記載しますのでそちらも参考にしてください。

ちなみに陸上のクラウチングスタートは、第1回のアテネオリンピックで優勝した選手が使用して広く知れ渡ったと言います。それ以前はスタンディングスタートが主流で、選手が体格に合わせて好みで腰を屈めるなどの工夫を行っていたそうです。オリンピック以来、地面をしっかりと蹴り、脚を伸ばす力を有効に推進力に変えることが出来るクラウチングスタートに変わり今に至るようです。競技かるたの構えも体格などによって様々なものが存在してもおかしくありませんが、動きやすい基本となるものがあると思います。その上で自分流に工夫していくことが、体にも無理がなく、上達への近道になるのだと思います。変なクセがつく前にぜひ。